2023.07.19

「しろがねの葉」の道を辿って その壱~大森銀山地区~

第168回直木賞を受賞した千早茜さんの「しろがねの葉」。

戦国時代から江戸初期の石見銀山に生きた女性の生涯が描かれています。

シルバーラッシュに湧き、世界の経済に影響を与えた石見銀山。

物語を読み進めていくと千早さんの表現する濃密な世界に引き込まれていきます。

過酷な環境で銀を掘り続ける銀堀や山師、そして、銀山の町で生きていくしかない女性たちの物語です。

 

舞台になったのは、島根県の中央に位置する大田市にある、大森町の大森銀山地区や温泉津町の港や温泉街。

世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」、また「重要伝統的建造物群保存地区」として、今を生きる人たちが、大事に守り続けている場所でもあります。

 

大森銀山地区は銀山川沿いの谷間に約3kmの町並み、温泉津も港から温泉に向かって約1kmあり、どちらも往時は多くの人で賑わっていたと言われています。

今はどちらも静かな町ですが、辺りをゆっくり見渡すと物語に登場する地名や苗字なども多くあり、物語の面影がいたるところで感じられます。シルバーラッシュの時代に生きた人はどんな想いでこの景色を眺めたのでしょう。

物語の主人公「ウメ」やその庇護者であった山師「喜兵衛」たちが辿ったであろうその場所を巡ってみましょう。

 

■ウメはどこから来たのか

ウメのいた村の男たちが銀山のことを「山を二つ三つ越えた石見の国」といい、ウメの母親は「まっすぐ、日の沈む方に」行けとウメに告げました。 ということは、ここから東、どの山を越えてウメはここに来たのかと考えるのも興味深いかもしれません。

銀は港から運ばれましたが、実は中国山地には銀山に関係した街道などもあります。

 

■ウメが感じた間歩の闇~龍源寺間歩・大久保間歩

約1000カ所もあるといわれる間歩(坑道跡)のうち、現在2つが公開されています。

ひとつは龍源寺間歩。江戸中期の代官所直営の間歩で、側面には当時のノミの跡がそのまま残っています。坑内の温度は年間を通して変化がなく、夏は涼しく感じます。

もう一つは大久保間歩。石見銀山世界遺産センターでの予約によるガイド付きツアーでのみ、行くことができます。
当時の代官が馬に乗ったまま入ったとも言われるスケールの大きな間歩は、奥へ進むにつれ、ひんやりとした空気とともに続く暗闇に、かつて多くの坑夫がノミを打ち続けた時代にタイムスリップしたような感じさえ覚えます。

間歩から外に出たときには、陽の光の強さを改めて感じると共に、安堵さえ感じます。


■佐毘売山神社

物語には、仙ノ山を背に、苔の生えた長い階段を見上げた先に、鳥居があります。 実際に上ってみると、佐毘売山(さひめやま)神社があります。

物語では、小川を挟んだ対岸には太鼓堂があり、銀堀や谷に住む人たちに時間を知らせていました。 ウメはその時の天気や、季節によって音が違うと喜兵衛に話しています。谷に住む人たちにはどんなふうに聞こえたのでしょう。

銀堀を守るという神様は「山神(さんじん)さん」と親しまれていました。往時は祭りも行われて、賑わっていたとされる場所ですが、今では静寂が広がり、鳥のさえずりが優しく聞こえてきます。

 

■春に先駆けて咲く梅の花

春先になると銀山のあちこちに梅の花が咲き始めます。

ウメという名前は縁起が良いといった喜兵衛。梅が銀の毒を消すということでウメは町のあちこちに梅を植えたとありました。今でも大森の町の中には梅の木が多く、開花が春の訪れを知らせています。

■銀山川沿いの谷の道

石見銀山公園から龍源寺間歩までは約2.3㎞あり、歩いていくと片道で約45分。

仙ノ山と山吹城の要害山の稜線を見ながら進むと、龍源寺間歩や佐毘売山(さひめやま)神社、清水谷精錬所跡へ行くことができます。

道中の道沿いの谷には、銀山川の澄んだ水が流れていて、今でも羽毛のような形をしたしろがねの葉「ヘビノネゴザ」の群生を見つけることができます。物語に出てくる植物を見つけ、山師の気分。なんだか嬉しくなります。

春の梅に桜、夏の竹林に秋のもみじ。谷の道はいつ訪れても豊かな自然が楽しめます。

この道は観光車両が入れないため、徒歩かアシスト付きの自転車、電動カートがおすすめです。
そして時間のある方にはぜひ石見銀山ガイドと一緒に歩いてみてください。銀鉱山の歴史はもちろん、当時の町並みのこと、生活の様子など、詳しい説明を聞くことができます。

山吹城跡(要害山)への登山も、道の整備はされていますが、石見銀山ガイドと一緒に登ると城についての説明や景色などを見ながら、安全に楽しむことができます。頂上からは町並みや日本海、国立公園三瓶山(さんべさん)などを眺めることができます。

 

つづく

 

【関連リンク】

・しろがねの葉(新潮社)

https://www.shinchosha.co.jp/book/334194/

 

・千早茜さんツイッター
https://twitter.com/chihacenti

 

・島根県大田市観光サイト

https://www.ginzan-wm.jp/

 

・はじめての石見銀山

https://hajimeteno.iwamiginzan.jp/

 

・石見銀山ガイドの会

http://iwamiginzan-guide.jp/

 

・石見銀山世界遺産センター

https://ginzan.city.oda.lg.jp/

 

・大久保間歩一般公開限定ツアー

http://www.iwami.or.jp/ginzan/

 

 

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